遺族年金も被相続人が亡くなったことで受け取るお金です。相続財産と混同し、相続放棄をすると遺族年金を受け取れないと心配される方がおられますが大丈夫。

遺族年金をもらえる方が相続放棄をしても、遺族年金は受け取れます。
遺族年金を受け取っていても、相続放棄の申し立ては可能です。
遺族年金の趣旨・目的は、故人と生計を同じしていた遺族の生活保障。遺族に相続放棄をしなければならない事情があっても、生活保障の必要性は変わりません。
遺族基礎年金
遺族基礎年金の受給については、以下の通り規定されています。
国民年金法第37条
遺族基礎年金は、被保険者又は被保険者であった者が次の各号のいずれかに該当する場合に、その者の配偶者又は子に支給する。一 被保険者が、死亡したとき。
以下、省略
遺族年金の受給には、
- 故人についての要件
- 日本に住んでいること
- きちんと年金を支払っていたこと
- 受給者についての要件
- 故人と生計を同じくしていたこと
- 子があること
などの要件を満たす必要がありますが、どれも相続放棄の有無と関係はありません。つまり、
遺族年金をもらえる方が相続放棄をしても、遺族基礎年金は受け取れます。
遺族基礎年金を受け取っていても、相続放棄の申し立ては可能です。
死亡一時金
前項の遺族基礎年金には要件があり、受給要件を満たさない場合、遺族年金は支給されません。そうすると年金が掛け捨てになってしまいます。それを防ぐための「死亡一時金」という制度があります。
この「死亡一時金」も相続放棄の有無とは関係なく、受け取ることが可能です。
国民年金法第52条の3
死亡一時金を受けることができる遺族は、死亡した者の配偶者、子、父母、孫、祖父母又は兄弟姉妹であって、その者の死亡の当時その者と生計を同じくしていたものとする。
ちなみに、死亡一時金の受給権の順序は上記の法律の規定のとおり、①配偶者、②子、③父母、④孫、⑤祖父母、⑥兄弟姉妹、と定められています。
遺族厚生年金
厚生年金も国民年金と同じく、相続放棄をしても、遺族年金の受給権に影響はありません。
遺族年金をもらえる方が相続放棄をしても、遺族厚生年金は受け取れます。
遺族厚生年金を受け取っていても、相続放棄の申し立ては可能です。
ちなみに、厚生年金は、国民年金よりも受給者の範囲が広く定められています。
厚生年金保険法第59条
遺族厚生年金を受けることができる遺族は、被保険者又は被保険者であつた者の配偶者、子、父母、孫又は祖父母であって、(中略)その者によって生計を維持したものとする。
相続放棄と年金のまとめ
以上の通り、相続放棄の申し立てが、遺族年金の受け取りに影響を及ぼすことはありません。
死亡退職金や死亡保険金などを受け取る権利は、就業規則や保険契約の内容によって定められているため、その内容によっては、相続放棄の影響が生じる可能性があります。
それに対し、遺族年金の受給権については、法律上「遺族固有の権利」と定められており、相続放棄の影響はありませんのでご安心ください。