相続放棄をする以上、故人名義の自動車を継続して使用することは出来ません!
これが大原則!!

となると、使えない自動車をどうすればいいのか?って問題になります。

前提としては、自動車に限らず、相続人不存在(相続放棄後も含む)の場合、故人の権利、義務の清算は、相続財産管理人が行います。法律の教科書的には、これが正解!

したがって、相続放棄をして処分に困った自動車も、四の五の言わずに、すんなり相続財産管理人に任せればいいんですが、予納金負担の問題など、教科書通りにはいかない部分もありますよね。現実は。

自動車維持費

というわけで、あくまでも、自己責任ですが、現実的な解決方法を考えてみましょう。(あくまでも、私案です。)

相続放棄後の自動車の処分

まあ、使えない自動車なので、単純に、

  1. 売却する
  2. 廃車にする
  3. 放置する

って方法が思い浮かびますが、売却、廃車は、処分行為として単純承認事由になりそうですし、放置するってのも、無責任な気がします。

ローン中なら話が早い!

前提として、ローン支払い中で、所有者がディーラーさんであれば、その自動車は、ディーラーさんのもの。さっさと引き取ってもらえばOKです。

売却

「売却」ってことは、売れるってことで、(市場)価値があるってことです。まさに財産の処分に当たりそうで、相続放棄手続上、マズい気がします。

実際、売却するには手続上、自動車の相続人への名義変更が必要で、その名義変更手続きには、原則、遺産分割協議書を添付するっていうと、完全に単純承認、アウトな気もします。

ただ、法律の趣旨を考えると、相続放棄をした相続人に課せられた管理義務(民法940条)には、財産の価値を現状のまま維持する行為(保存行為)は当然含まれると考えられます。

つまり、たとえば30万円で売れる自動車を、数年放置し、無価値(0円)にしてしまってから廃車にするよりも、今、売って、30万円の現金に形を変えて保管する方が、誰にとってもベターなのは明らか。管理期間中の保管場所のコストも発生しませんしね。

つまり、相続財産の価値を維持するための自動車の売却は、その売却手続きの経緯を、きちんと証拠を残しながらすすめ、売却代金をきちんと管理しておけば、誰にも咎められる理由なんてないと考えます。(もちろん、隠匿目的や知人に格安で売るなんて行為はダメですよ)

廃車

もともと、売れない自動車であれば、財産価値がない、言い換えるとゴミなので、捨ててしまいましょう。
とは言え、自動車はゴミ箱へ捨てるって訳にはいかないので、きちんと廃車手続をする必要があります。廃車の場合も、売却と同様、一旦、相続人への名義変更が必要となりますが、単に、廃車にするための便宜上、形式上の手続であれば、本来、単純承認事由には該当しないと考えるべきでしょう。(もちろん、無価値というのは、査定書などの客観的な評価が必要です。)

つまり、売却、廃車いずれのケースでも、相続財産の管理の一環として、現金化する行為は、単純承認事由に当たらないと判断されるべきでしょう。実際、相続財産管理人だって、同じことをするのでしょうから。

売却、廃車手続によって、その代金や自動車税や自賠責保険などの還付金が発生すれば、当然、相続財産として自分の財産と分けて、きちんと保管、管理すべきなのは当然です。

放置

売却も廃車も、相続放棄が認められない、相続放棄が覆る可能性があるなら、絶対にムリってことで、放置する方もおられるでしょう。

放置するといっても自分の土地の上に、放置するスペースがあればいいでしょうが、他人の土地の上に放置するってのは、どうでしょうか?

相続放棄後の管理義務として、適正な管理方法とは言えないでしょう。場合によっては、土地の所有者等から、適正な管理を怠ったとして損害賠償請求される可能性もあるでしょう。

つまり、売却や廃車であれば、自動車の存在自体によって、迷惑をかけ続けることはなくなりますが、単純承認のリスクが。放置の場合はその状況が続くことで、管理責任上のリスクが発生し続けます。

まとめ

最善の方法(相続財産管理人選任)を選択しないで、相続財産である自動車を処分しようとすれば、ある程度のリスクは生じます。

価値のある相続財産としての自動車、無価値だけど処分に困る大きな動産としての自動車。いずれにしても、屋根付きの車庫・倉庫で、適正なメンテナンスをしながら、費用を掛けながら、何年も保管し続けることは現実的ではありません。

したがって、お勧めする訳ではありませんが、この記事で紹介したような処分方法が現実的かも知れません。

悪用の意思さえ無ければ許されるべきと思いませんか?