親子間など、相続関係にある方の間で(生前)贈与を行う際に利用される「相続時精算課税制度」。
簡単に説明すると、贈与税の後払い制度。
生前贈与の際に課税される贈与税を、相続が起こるタイミングまで遅らせて、相続税と一緒に計算・精算するものです。
つまり、相続時精算課税制度は、贈与の当事者間に相続関係があることが前提。
では、この相続時精算課税制度を利用すると、相続放棄が出来なくなるのでしょうか?
相続時精算課税制度と相続放棄は無関係
生前贈与を受け、相続時精算課税制度を利用する旨の届け出を行っていたとしても、相続放棄を申し立てることは可能です。過去の相続時精算課税制度利用が「相続を承認した」、つまり、単純承認になることはありません。
また、この制度では贈与税の課税のタイミングを相続が起こる時まで遅らせることになりますが、実際の贈与の時期は相続よりも前であることには変わりありません。
遅らせるのは、納税・課税のタイミングであって、実際の贈与自体まで遅らせることにはなりません。
したがって、相続時精算課税制度を利用した生前贈与を受けている方でも、相続放棄の申し立ては可能です。
悪意を持った制度の利用は濫用です
一般的な考え方は、前項のとおりです。
生前贈与・相続時精算課税制度の利用が、相続放棄に影響を及ぼすことはありません。
では、多額の負債を抱え債務超過に陥っていることを認識した方が、相続人と通謀し全部の財産を相続人へ生前贈与したようなケースでも、同じような結論でよいのでしょうか?
このようなケースでも、相続放棄の申し立て自体は受理されるかも知れません。
しかし、債権者を害する目的で行った生前贈与について、あとあと債権者から裁判で否認される可能性が高いと考えられます。つまり結果的には、生前贈与を受けた財産は、被相続人の財産に戻されてしまうのです。
したがって、「債権者から財産を隠すため」の生前贈与は、行う意味がない・行うべきではありません。