相続放棄のここが知りたい!

相続放棄 | 賃貸住宅はどうしたらいい?

相続放棄の相談で、やっかいな問題が、亡くなった方が賃貸住宅におひとりでお住まいだったケースです。

住宅に残された家財道具はどうする?
家賃はどうしたらいいの?
電気・ガスなどを止めないと!

などなど、対応に苦慮することがあります。

まず、被相続人が死亡したとしても、賃貸借契約は、死亡によって自動的に終了するものではありません。
大家さんとしては、一刻も早く、賃貸借契約を終了させ、部屋を明け渡してもらって、次の方に貸したいのです。

相続放棄でダメな行為とは

相続人の方が、亡くなった方の財産を使ってしまうと、相続を認めたことになってしまいます。ですから、相続放棄をする場合には、被相続人の財産を使ってはいけません。

ところで、相続放棄が認められない単純承認事由として、法律上は以下のように定められていますので、

相続人が相続財産の全部、または一部を処分したとき。ただし、保存行為、および短期賃貸(民法602条)をすることは、この限りでない。

相続放棄を検討している相続人としては、保存行為以外はしてはいけないことになります。

詳しくは、相続放棄 | してはいけないこと!

賃貸借契約の解除

では、被相続人が賃借していたアパートの賃貸借契約の解除はといえば、法律上「管理行為」に該当します。つまりセーフである「保存行為」の範囲を超えてしまうのです。

ですので、相続放棄を検討されている、または相続放棄を申し立てた場合には、大家さんとの賃貸借契約の解除には応じられない、との結論になります。

法律上の結論はさておき、道義的な責任で、何とかならないか?との相談も頂くのですが、法律上の手続である「相続放棄」を選択される場合には、法律上の結論を重視して頂くことになります。

それ以上のことは「自己責任」で対応していただくよりありません。

家財道具、日用品等の処分

こちらは、故人が部屋に残された物の処分の問題。(残置物などと言われます)
部屋の中にどのようなものがあるのかは、被相続人の生活状況によりますが、被相続人がのこしたすべてのものが、まったく価値のないものと、決め付けることは出来ません。

したがって、形見分けは別として、やはり、家財道具等の処分を行うことは、相続放棄のルールを破ってしまう可能性をはらんでいます。かさだかいものでなければ、アパートから搬出し、別の場所で保管・管理すればいいでしょうが、実際、長期間、家財道具一式を保管するスペースなどなかなか準備出来るものではありません。

結局、部屋に残された物の処分についても「出来ません」と答えるほかありません。相続人ご自身の安全のためには、「出来るだけ、かかわらない」との結論になってしまいます。

ご迷惑はお掛けしてしまいます

冷たい言い方になってしまいますが、相続放棄をする以上、まわりの誰かに迷惑を掛けてしまうのは仕方がありません。

見知らぬ金融機関に迷惑をかけるのはオッケーで、顔見知りの大家さんには迷惑をかけたくないっていうのは、よく理解できる考えではありますが、矛盾した考えでもあるのです。

私自身、法律に携わる仕事上の立場を離れて考えれば、「迷惑をかける方の範囲を最小限にしたい」との心情は、よくよく理解できます。
ただ、相続放棄の効果をなくしてしまいかねない行為については、立場上、賛成・同意はできないこともご理解下さい!

「どうしても、きちんと片付けたい!」という場合には、かなりハードルは高いですが、相続財産管理人を選任することになります。

相続財産管理人について詳しくはこちら

もし、相続人が連帯保証人だったら?

賃貸借契約には、大抵の場合、連帯保証契約も締結されています。つまり、連帯保証人が存在します。

しかし、一般的な賃貸借契約に付随した連帯保証契約では、連帯保証人に賃貸借契約の解除権が認められていないケースが多いと思われます。

このようなケースで、相続放棄を検討している相続人が、連帯保証人になっていたらどうなるのでしょう。

相続人が全員相続放棄をすれば、賃貸借契約の借主の立場で解除権を行使可能な人は存在しません。また連帯保証人も解除権が認めらていなければ、解除することができません。つまり、賃貸借契約が解除されない限り、どんどん未払いの家賃が増えていってしまいます。賃貸人(大家さん)へ連帯保証契約の解除をお願いしても、相続放棄をした相続人のお願いを聞きいれてもらえるとは考えられません。

相続人の立場としての支払い義務は相続放棄によって、免れることが可能ですが、連帯保証人としての滞納家賃の支払い義務はどんどん大きくなってしまいます。

こんなケースも、相続財産管理人を選任出来れば、法的にきちんと解決されるのでしょう。しかし

実際にはこんな解決が図られているのでしょう

ここからは推測になりますが、他の債権者から相続財産管理人が選任される期待がある場合は別として、こんなケースでは、相続放棄を申し立てた相続人と大家さんとの間で、暗黙の了解・合意が形成され、内々で処理が行われていると思われます。

相続財産管理人を選任すれば、ノーリスクかも知れませんが、高コスト。結局、相続人も連帯保証人も大家さんもある種の経済的被害が発生しており、誰が得をする訳でもなく、リスクが顕在化している訳でもない、そんな状況で、これ以上コストを掛ける選択が行われる可能性は低いと考えられます。

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