故人が残した財産から、葬儀費用・仏壇・墓石などの費用を支払うことは、相続財産の処分にあたるのでしょうか?

葬儀費用

葬儀費用

妥当な額の葬儀費用を相続財産から支払うことは、相続財産の処分にあたりません

つまり、相続放棄をするつもりでも、相続財産で葬儀代金を支払うことは大丈夫です。

ただ、【妥当な額の葬儀費用】であることが条件となっています。裁判例としては、

身分相当の、遺族として当然営まなければならない程度の葬式を行った費用であれば、相続財産を支出することは相続財産の処分に当たらない。

【東京控判 昭和11.9.21】

相続人が、ほとんど経済的な価値のない被相続人の身の回りの品及び僅少な所持金を引き取り、これに相続人の所持金を加えて遺族として当然なすべき火葬費用及び治療費残額の支払いにあてたことは、相続財産の処分に当たらない。

【大阪高決 昭和54.3.22】

とされており、あまりにも立派すぎる葬式の費用でない限り、相続財産の処分にはあたりません。

昨今は【家族葬】のような比較的安価な葬儀が増えており、そのような形式での葬儀であれば問題になるケースは少ないものと考えられます。

仏壇・墓石

相続財産からの葬儀費用の支出が、相続財産の処分にあたらないとして、同じような祭祀に関する、仏壇や墓石の購入費用は、どうでしょうか?

葬儀費用と同じ扱いになるとは限りません。

ある裁判例では、社会的に見て不相当に高額でない仏壇・墓石の購入について、「相続財産の処分に当たるとは断定できない」と判断し、相続放棄申述を受理しています。

しかし、「仏壇・墓石の購入は大丈夫!」と考えることは出来ません。

相続放棄の申述については、「明らかに要件を欠くとは認められない場合にはこれを受理すべき」という根本的な考えがあります。

したがって、上記の裁判のケースでは、支出した金額などを総合的に判断した結果、認められたのであって、仏壇・墓石等の購入が相続財産の処分に当たらないと一般化して考えることはできないのです。

相続財産から、仏壇仏具・墓石などへの支出は、控えた方が無難と考えます。

お香典

お香典は誰に対して行うものか?

お香典は故人に対して行うものではなく、喪主に対して行われる一種の贈与です。

香典は、被相続人の葬儀に関連する出費に充当する事を主たる目的として、葬儀の主宰者になされた贈与の性質を有す金員であって遺産には属さないと解される

【東京家裁 昭和44.5.10】

裁判でもこのように判断されており、お香典は、残されたご遺族への心使いであって、相続財産に含まれません。受け取って頂いて構いません。葬儀費用にあてるなど、お香典を支出することは相続放棄との関係で問題にはなりませんのでご安心ください。