相続とは、被相続人のすべての権利・義務を引き継ぐ
と解説されることもありますが、厳密には正しくありません。
引き継がれるのが原則ですが、例外として、相続によっても引き継がれない権利・義務があります。
それを、法律用語で「一身専属権(いっしんせんぞくけん)」といいます。
一身専属権とは?
この一身専属権とは、何なのか?
簡単に言えば、その人(被相続人)だから得られた権利や義務のことです。
有名俳優さんと映画の出演契約をしていたが、クランクインの後亡くなってしまったとしても、代わりに相続人に出演してもらっても仕方がないですよね。
会社員であるお父さんが亡くなって、代わりに息子さんがお勤めする訳にはいきません。
このように、被相続人の権利・義務であっても、相続になじまないものもあり、そのような権利は引き継がれないものとされています。
一身専属権の具体例
この一身専属権には、学説など難しい議論はありますが、ここでは具体例を紹介します。
これらは法律上、死亡によって契約関係が終了すると定められています。
法律上の一身専属権の例
- 代理契約の本人・代理人の地位(民法111条)
- 使用貸借契約における借主の地位(民法599条)
- 雇用契約の使用者・被用者の地位(民法625条)
- 委任契約の委任者・受任者の地位(民法653条)
法律上定められていない(明文上の規定がない)ものでは、
実体上一身専属権とされている例
- 生活保護給付の受給権
- 代替性がない債務(先ほどの俳優の例など)
- 公営住宅の使用権
などが相続によって引き継がれない権利とされています。
つまり、一身専属権に含まれる権利・義務は、相続放棄をしようがしまいが、相続人に引き継がれることはありません。