相続放棄が出来なくなる理由、【法定単純承認】の具体例。形見分けについて。
形見分けは単純承認にあたらないとされた例
故人の思い出の品をわけてもらう「形見わけ」。実際には、相続財産をもらうことになりますが、相続放棄に影響はないのでしょうか?
相続人が、交換価値を失う程度に着古したボロの上着とズボン各1着を第三者を与えた場合、一般的経済価値があるものの処分にはあたらない。
【東京高裁決定 昭和37.7.19】
相当多額にあった相続財産中から、背広上下、冬のオーバー、スプリングコート、位牌を持ち帰り、時計、椅子2脚の送付を受けたことは、相続財産の処分にあたらない
【山口地裁 徳山支部判 昭和40.5.13】
どちらも、古い裁判例(衣類に財産的価値があった時代)ですが、単純承認にあらたない事例とされています。
現在では、相続財産全体の額・被相続人・相続人の経済状態・形見分けの趣旨などの総合判断になると考えられています。
ちなみに、平成21年の判決では、ノートパソコン・テレビ(ブラウン管)の形見分けは、「経済的な重要性を欠くから単純承認にはあたらない」との判断があります。
形見分けが単純承認にあたるとされた例
衣類でも、一般経済価値を有するものを他人に贈与したときは、単純承認にあたる。
【大判 昭和3.7.3】
とされており、
スーツ・毛皮・コート・靴・絨毯などの遺品のすべてを自宅に持ち帰った行為は、形見分けを超える。
【東京地判 平成12.3.21】
として、民法921条第3項の隠匿にあたるとして、単純承認とされています。
こちらも古い判例と、比較的新しい判例ですが、「形見分け」の金額が、常識の範囲を超える場合には、許されないと判断されています。
何が単純承認なのか?については、この【常識の範囲内】が非常に大きな判断基準になります。
形見分けと単純承認
ご紹介したとおり、形見分けについて、具体的で明確な基準はありません。【常識の範囲内】かどうか判断が必要です。
形見分けについて明確な判断基準がない以上、高価な形見分けは受け取らない方が無難である。と言えます。