相続放棄の基本的な考え方は、相続放棄って?で解説したとおりです。
では、実際に【相続しない!】という相続人の意思表示はどのような方法で行えばいいのでしょうか?
相続放棄は家庭裁判所で!
【相続放棄】は、家庭裁判所へ申し立てを行うことで、はじめて認められるものです。
その申し立てには、「自分が相続に関係したことを知ってから3ヵ月以内に」と期限があり、期限内に申し立てを行わないと、「相続を認めた」ことになってしまいます。
また【相続しない!】という意味では、「遺産は要りません」と同じ意味・趣旨のように考えられそうですが、それは大きな落とし穴です。
相続人の間で「遺産は要りません」と決めることを、「遺産放棄」と呼んだりしますが、この遺産放棄と相続放棄とはまったく意味が違います。相続人の間での話し合い・合意には、「相続放棄」の効果はありません。
相続放棄は家庭裁判所で行うもの。「相続放棄したつもり」には、ご注意下さい。
詳しくは、相続放棄・相続分の放棄・遺産の放棄。ちがいがわかりますか?をご覧ください。
相続放棄の申し立て
相続放棄の申し立ては、被相続人の住所地を管轄する家庭裁判所へ、【相続放棄申述書】を提出することで行います。
その申し立てには、
- 被相続人が亡くなったこと
- 自分が相続人であること
- 場合によっては先順位の相続人が存在しないこと
を証明するための戸籍謄本を添付し、一緒に提出しなければいけません。
また、どこの裁判所へ提出してもいいわけではなく、被相続人の最後の住所地を管轄する裁判所へ提出が必要で、提出先が間違っていないことを証明するために、被相続人の最後の住民票も提出しなければなりません。
また、3ヵ月の期限内の申し立てかどうかの証明のために、「自分が相続に関係したことを知った日」についても証明が必要なケースもあります。
これらの作業・事務手続きが苦にならない方であれば、ご自身で相続放棄を申し立てることも十分可能です。
親族全員が、ずっと同じ場所で生活し、本籍地も同じようなケースでは、町役場へ行けば一度ですべての戸籍が揃うこともあります。
しかし、被相続人の本籍地が遠方であるケースでは、戸籍の取得のために、遠方の役場へ足を運んだり、郵送での取得が必要になったり、時間がかかることがあります。
また、兄弟姉妹の方が申し立てを行うケースでは、膨大な量の戸籍の取得が必要となるため事務量が増え、正確に無駄なく作業をしなければ、スケジュール的に厳しくなるケースもございます。
照会書の提出・証明書の取得
相続放棄の申し立てを行うと、その申し立てが真実であるかどうか、裁判所から書面での問い合わせがなされます。
裁判所がこのような確認を行うのは、財産争いをしている兄弟などが、自分の知らない間に勝手に、なりすましによって相続放棄の申し立てを行うことを防ぐためのものと考えます。それが、【照会書】といわれる書類です。裁判所の混雑・処理の事情にもよりますが、おおむね2週間程度で送られてきます。
この照会書へ、相続放棄申述書に記入した内容と同様の事情を記入し、裁判所へ返送します。
相続放棄が認められた場合には、【相続放棄申述受理書】なる書面が送られてきます。こちらも、裁判所の状況によりますが、照会書の返送から1~2週間程度で送付されます。
【相続放棄申述受理書】でも、相続放棄が申し立てられ、それが受理されたことの簡易な証明にはなりますが、厳密に言うと【証明書】ではありません。そこで、【相続放棄申述受理証明書】を取得することをお勧めします。
相続の関係者から、相続に関する問い合わせや要望・苦情などがあった場合には、この【相続放棄申述受理証明書】を提示することで、その相続とは無関係であることを主張することができます。
相続放棄の一連の手続きは、この【相続放棄申述受理証明書】を取得することで完了です。