こんばんは、神戸の司法書士 塚本です。今回は遺言の検認申立事件から

自筆証書遺言は遺言の検認が必要です。

自筆証書遺言とは、文字どおり、じぶんで書いた(筆をとった)遺言。

その遺言をもとに、相続登記や預貯金の解約などを行うためには、その前提として家庭裁判所で「検認」手続が必要です。

「検認」とは,相続人に対し遺言の存在及びその内容を知らせるとともに,遺言書の形状,加除訂正の状態,日付,署名など検認の日現在における遺言書の内容を明確にして,遺言書の偽造・変造を防止するための手続です。遺言の有効・無効を判断する手続ではありません。

法務省HPより

家庭裁判所で検認を受けると、検認済みである旨を記載した紙(下記サンプル)が遺言の末尾に綴じられ、検認済みの遺言であることが一目瞭然、登記や預貯金の解約に使用できるようになります。

検認済

相続人の権利を守るため

遺言検認の目的は、上記のとおり、相続人に対し遺言の存在及びその内容を知らせることが含まれており、遺言検認の申し立て書には、相続人全員の氏名、本籍、住所、生年月日を記載する必要があります。

検認手続では、相続人全員を呼び出して、遺言の検認(確認)の機会をあたえなければならないのです。

相続人

遺言者の字と違う!偽造や!無効や

って言える機会が必要なんですね。相続人の知らない間に相続手続きが終わっていたら大変ですので、検認手続は厳格でなくてはいけません。

相続人の調査には限界があります

遺言検認申立のご依頼を頂いた今回の事案は、兄弟姉妹が相続人になるケース。大量の戸籍が必要です。さっそく相続人の戸籍等の調査をしてみると・・・・

既に亡くなっている遠い親戚の男性が、外国籍の女性と婚姻し、その女性の子を認知していることが判明。よって、その認知された子が代襲相続人となります。今回の調査の対象になるのですが、もちろん、その子は外国籍で戸籍はなく、ご依頼者に伺っても、疎遠なので現況などはわかりませんでした。

認知したとの記載のある戸籍から判明するのは、その子の国籍、氏名(本国名)、生年月日(西暦)ぐらいで、その他の情報は、その当時に認知届を受理した役所ぐらいですが、認知届などの戸籍の届出書の保存期間は27年で、今回のケースでは、とっくに保存期間が経過していました。

司法書士の職権では、これ以上の調査は出来ません。お手上げです。

できないものはできません

ところで、遺言書の検認申立書作成&提出は、法律で規定された司法書士の業務なのです。その司法書士が職務上調査が可能な範囲で調査して、それでも判明しなかったのですから、調査は不可能なんです!

まあ、興信所とか使えば、他の情報が入手可能なのかも知れませんが、私は探偵ではありません!

というわけで、裁判所へは、当該相続人について「住所不明」として申し立てしました。

数日後、裁判所からこの相続人に関する事情を聴かれましたが、「これ以上の調査は出来ません。やれることはやりました」ってことで納得頂き、無事、検認期日が決定。検認も完了し、相続登記も完了。任務完了。お疲れ様となりました。

不在住証明書、不在籍証明書、(戸籍の)破棄証明書、などなど、もっと資料を出して下さい!っていう役所(法務局)とはちがい、家庭裁判所の理解ある対応に感謝です。