会社の登記のお話です。
会社の役員の就任の登記の添付書類が変更になります。
法律実務家的に言うと「商業登記規則規則第61条第5項の改正」。
運用は、平成27年2月27日からです。
本人確認書類の添付が必要になります。
会社の取締役・監査役・執行役などの役員(以下「役員等」とします。)へ就任される場合、「本人確認書類」の添付(原本証明した謄本で可)が必要になります。
というよりも、今までは「就任承諾書」という書面(それも認印で押印でOK)の提出しか求められていなかったため、会社の機関設計によっては、まったく実在しない人物を役員にすることも出来ました。
例えば、「監査役 アムロ・レイ」や「取締役 石原 裕次郎」「取締役 渡 哲也」なども出来るっちゃ出来たと思います。(司法書士としてはもちろん確認しますが)
それが今後は、本人確認資料の添付が求められますので、きちんとした登記が行われるものと考えます。
添付する本人確認資料の例
- 住民票記載事項証明書(住民票の写し)
- 戸籍の附票
- マイナンバーカード(表面)のコピー※
住基カード(住所が記載されているもの)のコピー※- 運転免許証等のコピー※
(※ 裏面もコピーし,本人が「原本と相違がない。」と記載して,記名押印する必要があります。)
とのことです。本人確認資料としては脆弱なものも含まれますが、利用者の手間等を勘案しての判断と思われます。
ただし、もともと登記に印鑑証明書が必要なケースでは(取締役会・監査役を置かない株式会社の設立等)、その印鑑証明書が本人確認資料になりますので、添付書類が増える訳ではありません。しかし、単に役員の追加のケースでは、今までと取扱いが変わりますので注意が必要です。
代表取締役の辞任も添付書類が変わります。
こちらは「商業登記規則規則第61条第6項の改正」。代表取締役の辞任と書きましたが、実際には代表権がある法人の代表者の辞任に適用されます。
つまり、法務局に印鑑を届け出た方、つまり、会社の印鑑証明書に氏名が記載される方の辞任のケースです。変更になるのは、
- 1 辞任届に個人の実印を押す場合
- 代表者個人の印鑑証明書
- 2 辞任届に法務局届出印を押す場合
- 辞任届だけでOK
こちらも、実務的には、委任状に法務局届出印を押印するため、同時に辞任届にも押印頂ければ、添付書類が変わることはありません。
そもそも、代表者の交代のケースでは、会社の乗っ取りなども想定されるため、司法書士が代理する場合には、厳格にチェックするのが当然です。
法務局届出印だけでOKというのも、利用者に甘すぎる気が・・・。
旧姓の併記
その他、今回の改正では、会社役員の方々の婚姻前の姓を登記することが可能になります。
現政権の「女性の社会進出」、「女性企業家・役員の増加」の政策によるものでしょうか?
現在登記されている役員の方々(男性でも女性でも)で、旧姓(婚姻前の姓)を登記されたい方は、戸籍謄本を添付して申請することで、登記記録の付記が出来るようです。
詳しくは、法務局の案内をご覧ください。
実在しない人間を取締役として登記したような会社が、振り込め詐欺などの不当な行為に悪用されるケースがあるようです。それら不当な行為の被害にあった方が取締役への責任追及訴訟を起こそうにも、実在しない相手には裁判が出来ない!そんな馬鹿げた事態を防ぐ目的もあるようです。
不動産登記のように厳格な本人確認義務を課すことなく運用されていた商業登記。お役所自らミスを認めたってことでしょうか。
今回改正されたましたが、住民票が本人確認資料になるなんて、不動産登記と比べれば、まだまだ非常に甘いと感じます。