こんばんは!神戸の司法書士の塚本です。

タイトルの通り、不動産を売却される方が権利証をなくしてしまったので、「資格者代理人による本人確情報」を作成するため、売主さんのご自宅を訪問してきましたので、そのお話しを。

権利証がない|本人確認情報作成のための出張面談

不動産の仲介業者さんへ事前に聞いてみたところ、マイナンバーカードや運転免許証は無いらしく、後期高齢者医療被保険者証はあるらしいけど、その他、それらしい書類が無いけど、どうしたらいいですか?ってことでした。

とにかく売主さんのご自宅に行ってみての勝負、当たって砕けろです。

権利証をなくしたとき

前提として、不動産を売るための登記には「権利証」が必要。大事な書類ですが、単なる書類なので、失くしてしまうこともあります。

そんなとき、代わりの方法はいくつかあるのですが、一般的な不動産取引の際には、「資格者代理人による本人確認情報」(以下、本人確認情報)を作成し、権利証の代わりに使う方法が多いと思います。(その他の方法では、デメリットが大きいので)

で、その「資格者」とは、もちろん司法書士で、司法書士が売主さんが不動産の所有者に間違いないことを確認し、その書類を権利証に代わる書類として使うのです。とりあえず「権利証=本人確認情報」とお考えください。

本人確認情報を作成するにはルールがあって、司法書士の主観(間違いないなぁ)だけではもちろんダメ。本人として確認するための方法が法律で定められており、確認した書類のコピーを法務局へ提出する必要があります。

本人確認情報作成のための確認書類

法律では以下の書類を元に本人確認をしなければならないと決められています。

顔写真つきの公的証明書類は1個でオッケー(1号書類)

  • 運転免許証
  • マイナンバーカード
  • 運転経歴証明書
権利証がない|本人確認情報作成のための出張面談

などです。まあ、あれば苦労しませんね。今回もありませんでした。

顔写真のない公的な証明書類は2個必要(2号書類)

一般的で使えそうなものは以下のようなもの。

  • 国民健康保険、健康保険、船員保険、後期高齢者医療、介護保険の被保険者証
  • 年金手帳
権利証がない|本人確認情報作成のための出張面談

その他では、母子手帳、身体障害者手帳、療育手帳など、限定的なものばかりです。

顔写真の無い公的な証明書類が1個しかない場合(3号書類)

上記の2号書類1個と、3号書類が1個必要です。

3号書類とは「官公庁から発行され、又は発給された書類その他これに準ずるものであって、当該申請人の氏名、住所及び生年月日の記載があるもの」と定められていますが、具体的に何とは決まってません。

パッと思いつくものとしては、住民票、印鑑証明書ぐらいでしょうか?とはいえ、どちらも3号書類として使用可とする公式見解はありません(今のところ)。

その他でこじつけて考えると、介護保険や健康保険の負担割合証、障がい福祉サービス受給者証も該当しそうですね(2号書類でもいいんじゃないですか?)

国家資格者の免許証も該当しそうに思いますが、例えば司法書士会員証には、事務所の住所が記載されていて、自宅住所は記載がないので要件を充たさず!NGです。中には使える国家資格者証もあるかも知れませんって程度ですね。

65歳以上なら介護保険証はあるはず

今回の売主さん、後期高齢者医療被保険者証はもっているらしい(すなわち75歳以上)ので、介護保険の被保険者証ももっているはず。

介護保険証は、65歳以上の全員、40歳~64歳の介護の必要な方に交付されているはず、滅茶苦茶お元気で、介護保険サービスを利用されていなくても、介護保険証自体は交付されているはずなんです。

ご自宅訪問の際に、売主さんに伺ってみると、ずいぶん昔に受け取った気がするってことで、ご家族さんにも協力頂いて探してもらったところ、見つかりました!

ところで、本人確認のための書類に有効期限のあるものは、有効期限内のものしか使えません。10年前の免許証じゃだめなんです。

介護保険証の有効期限

で、探してもらった介護保険証、有効期限を書いた欄が見当たりません。さらに交付年月日を確認してみると「平成18年○月◎日」と17年前のもの。

普段、成年後見業務で、介護保険証の更新とかやってるはずなのに???介護保険証には有効期限があったはず???なんじゃこら?使えない?

ってことで、事務所の精鋭、若槻司法書士へ聞いてみたところ、

若槻司法書士
若槻司法書士

要介護認定を受けている方(要支援1とか要介護3とか)は、その要介護認定の有効期間があるので、介護保険証の更新が必要になるけど、要介護認定を受けていない方(介護保険を利用しない方)の場合は、介護保険証に有効期限は無いとのこと。

ただ、要介護認定を受けて失効したはずの従前の介護保険証を返納していない可能性はあるらしい。

念のため、被保険者番号を元に、17年前の介護保険証が現在も有効かどうか区役所へ確認したところ、無事、有効とのこと。はい、使えます!

法務局の有効期限チェックは?

本人確認情報に、有効期限内の後期高齢者医療保険証と、有効期限の記載のない介護保険証を添付して申請。介護保険を利用しているかどうか、有効期限を確認したかどうかはあえて記載しなかったのですが、特に指摘もなく、無事登記は完了しました。

司法書士が確認しているはずだから問題なし!ってことなのでしょう。

65歳以上なら2号書類は2つある!はず。で3号書類って?

今回、2号書類が揃わなかったら3号書類の出番かな~と思っていたのですが、2号書類が2点あったので、無事、本人確認は完了。

65歳以上であれば、たとえ介護保険を利用していない方でも、2号書類である介護保険被保険者証が交付されているはずなので、医療保険証と合わせて2点の2号書類があるはずなんですね。

まあ、マイナンバーカードも、ばらまきのおかげで、ずいぶん普及してきたので、将来的には本人確認情報作成で困ることは減っていくものと思います。

3号書類は謎のまま

今回も3号書類の出番はなく、謎のまま終わったのですが、「官公庁から発行され、又は発給された書類その他これに準ずるものであって、当該申請人の氏名、住所及び生年月日の記載があるもの」について、司法書士的には議論があって、

  • 3号書類を使うなら本人確認情報は書かない説
  • 売主の自宅に赴いて本人確認をしたら住民票でよい説
  • 本人確認情報の内容、出来次第で柔軟に認められる説
住民票

など諸説あるようです。

今回、自宅に伺っての本人確認だったので3号書類として住民票を利用してみようかと思っておりましたが、2号書類が出てきたので、今回も3号書類の出番なし。またの機会に、試してみます!