こんばんは!神戸の司法書士 塚本です。
今日のお話しは、財産分与の調停調書が登記に使えないじゃんって事件について。
事件の概要
以前、別件でご依頼頂いた方(男性)から「マンションの名義変更登記をお願いします」ってご依頼を頂きました。
事情を伺うと、夫婦の双方が弁護士を立てて離婚調停を行い、妻名義のマンションを財産分与で受け取ることになったようです。
財産分与の名義変更と同時に、新たに住宅ローンも利用されるとのことで、金融機関の担当者と電話で打ち合わせたところ、
- 現在利用している住宅ローンの抵当権抹消登記
- 離婚調停で合意した財産分与による所有権移転登記
- それに合わせて住宅ローンを借りるための抵当権設定登記
の3件の登記が必要なようです。
通常の不動産売買取引のように、➊抵当権抹消登記、➋所有権移転登記、➌抵当権設定登記の3件の登記を一括して(一日で)申請する計画でしょうか???
調停調書には・・・
ってことで、離婚調停を担当した弁護士さんから調停調書を送ってもらい、財産分与の合意内容を確認したところ、➌の現在の住宅ローンの残債相当額を、夫から妻へ支払うことを条件に、➊の財産分与を原因とする所有権移転登記を行うとの内容。要するに名義変更登記に条件が付されているんです。
先に元奥さんに現在の住宅ローンの残債相当額を支払わなければ、名義変更登記ができないって約束なんです。
もちろんご依頼者さんに、そんな余剰資金なんてあるはずない訳で、新たな住宅ローンの融資金を返済資金に充てる腹積もり。
通常の不動産売買取引のように、➊抵当権抹消登記、➋所有権移転登記、➌抵当権設定登記の3件の登記を、一日で申請すれば問題はないのですが、今回は離婚調停調書をつかって名義変更登記を申請する計画。
まず先に住宅ローンの残債相当額を実際に支払って(条件を成就させ)、そのことを家庭裁判所に証明して、調停調書に条件成就の執行文を付与してもらわないと調停調書を使った名義変更登記が出来ないんですが、条件成就の執行文なんて、即日発行されるものではありません。
つまり、新たな住宅ローンを貸した銀行は、抵当権の登記ができず、執行文が付与されるまで無担保での貸付になってしまうのです。したがって、そんな条件では貸せません!となると、現在の住宅ローンは返せません!ってことで、暗礁に。
新たに住宅ローンを組む銀行の担当者さんと、「こりゃ、無理やな!流れたな~」なんて言っていたんです。
どうにか方法は?
と言う訳で、離婚調停を担当した弁護士さんに「この調停調書じゃ実現できませんね~」ってお伝えしたところ、相手方の弁護士さんも巻き込んで、「どうにかなりませんか?」ってことになりまして・・・
最終的には相手方である元妻の方や、抹消銀行のご協力を頂いて、なんとか予定通り、無事に登記を完了させることができました。
法律の専門家である弁護士さんですが、不動産登記実務については司法書士が専門です。
登記が絡む事件では、司法書士に確認頂いた方が、安全かと思いま~す。