成年後見

成年後見人に対する医療同意の要請

同僚の若槻司法書士が、よく似た記事を書いていた記憶がありますが、最近、この手の要請が多いのです。

なかなかご理解頂けないことが多いので、ここで成年後見人が医療同意・身元保証ができない理由を整理して、考えてみます。今回は医療同意について。

とにかくこれらの問題の元凶は、法律の不備!
現場に携わる方々が、それぞれのルールに従い業務を行うと、結局、全ての不利益が本人へ帰属するという、重大な欠陥があるように思えます。解決には、立法上の措置が必要なのです。

そもそも医療同意が必要な理由

医師の職業倫理を定めたものの、医療同意に関する規定の一部抜粋です。

医師が診療を行う場合には、患者の自由な意思に基づく同意が不可欠であり、その際、医師は患者の同意を得るために診療内容に応じた説明をする必要がある。医師は患者から同意を得るに先立ち、患者に対して治療・処置の目的、内容、性質、実施した場合およびしない場合の危険・利害得失、代替の有無などを十分に説明し、患者がそれを理解したうえでする同意、すなわち「インフォームド・コンセント」を得ることが大切である。
また、侵襲性の高い検査・治療などを行う場合には、説明内容にも言及した同意書を作成しておくことが望ましい。
患者に正常な判断能力のない場合、あるいは判断能力に疑いがある場合には、しかるべき家族や代理人あるいは患者の利益擁護者に対して病状や治療内容を説明し、同意を得ておくことも大切である。

お医者さんが、患者さんの本人の同意がないまま、医療行為を行うことは違法と判断されます(もちろん緊急性を要する場合は除かれます)。

したがって、本人が同意出来ない状態では、上記の倫理規定に沿って、「しかるべき家族や代理人」に同意を求め、医療行為の違法性を阻却する必要があります。

これらのお医者さんの立場は、よく理解できます。ルールにしたがったしかるべき対応です。

しかし、しかるべき家族や代理人とは、一体、誰をさすのでしょうか?
つまり、誰の同意を得たら、違法性が阻却されるのか?この点については、規定自体があいまいなため、事案ごとに様々な事情を考慮した上で裁判で判断される問題になります。本人の同意を得られない以上、リスクを除去することはできないのです。

実務上は、本人が後見相当で同意が出来ない場合には、家族に対して医療同意を求めます。

そして家族が居られない方の場合で成年後見人が選任されている場合には、成年後見人に対して医療同意を求めます。

成年後見人が選任されていない場合などには、担当のケアマネージャーにさえ医療同意を求めます。

しかし、成年後見人は一応?代理人ですのでさて置き、少なくともケアマネージャーは、しかるべき家族や代理人とはいえません。

そもそもケアマネージャーって?

ケアマネージャーの正式な名称は、「介護支援専門員」。その仕事は、介護保険法で次のように定められています。

要介護者等からの相談に応じ、及び要介護者等がその心身の状況等に応じ適切な居宅サービス又は施設サービスを利用できるよう市町村、居宅サービス事業を行う者、介護保険施設等との連絡調整等を行う者であって、要介護者等が自立した日常生活を営むのに必要な援助に関する専門的知識及び技術を有するものとして政令で定める者

上記のとおり、ケアマネージャーとは、ご本人のために関係各所と【連絡調整を行う者】です。
医療同意など、まったくお門違い。同意する権限も持たない方の、形式的な同意を得ても、違法性が阻却されるはずはありません。

成年後見人はどうなのか?

成年後見人の医療同意権については、諸説あるようですが、同意権はないとする考えが主流です。
すくなくとも、民法上、成年後見人に医療同意権があると規定されていませんし、そもそも家族にさえ医療同意権があるなどとする法律はないと思います。

インフルエンザの予防注射や血液検査など、比較的軽微な医療行為にまで、一切同意しないことが正しいとは考えません。
しかし、法律上同意する権限を有していない者が同意すること、同意する権限を有していない者に同意を求めることは、現場の混乱を招くことになるのではないかと考えます。

誰も責任・権限を与えられていない

このように、医療機関は、医療行為に関する同意が必要であり、成年後見人にはその権限が付与されていない。誰も責任・権限が与えられていない結果、以下のような調査結果があるそうです。

「同意能力低下患者に対する医療行為の同意取得に関する調査」によると、「同意が得られない場合には手術をしない」と回答した医師が半数近くに上るそうです。

お医者さんも、成年後見人も、患者さん、成年被後見人のために活動しているはずですが、立法上の欠陥が、現場の混乱を招き、患者さん・成年被後見人の不利益につながっています。

ガイドラインでは変わらないか?

立法措置には時間がかかるなら、「ガイドラインでも」と考えられます。

厚生労働省が発表した「終末期医療の決定プロセスに関するガイドライン」によると、本人の同意が得られない場合には、「家族がいない場合、(中略)患者にとっての最善の治療方針をとることを基本とする。」と定められています。

このガイドラインにどれほどの効力があるかはわかりかねますが、現状では、誰かに医療同意を求めるケースがあるので、あまり効果がないのでしょう。

法務省において「家族がいない場合など特段の事情が存在する場合には、成年被後見人にとっての最善の治療方針をとるため、成年後見人が医療同意することもやむを得ない」とのガイドラインを出せば、成年後見人が医療同意出来るケースが増えるものと考えます。

とにかく、速やかに何らかの措置が講じられることを切に願います。

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