不動産登記の相談の際には、まずは、登記簿で現状の確認します。
お医者さんに例えると、聴診器あてて現状の確認をするようなもんです。
そんな時よくあるのが、もう返し終わったはずの住宅ローンの登記が残ったままになっているケース。「抵当権設定」という登記です。
その事について「このローンはどうなってますか?」なんてお尋ねすると、「そんなんとっくに返済してるで!」って!(私が知ってるはずありませんがな!)
抵当権抹消登記は申請が必要!
住宅ローンを返し終わっても、銀行(保証会社)が法務局で勝手に手続きをしてくれる訳ではありません。銀行(保証会社)は、手続きに必要な書類をくれるだけ!
抵当権を消す(抵当権抹消登記)手続は、自分でしなくてはいけません。
これが、実際、締め切りがないので、「まあいいか」「今度しよっか」となったまま、忘れ去られているんです。
まあ、お金もかかるし、罰則もなければ先送り~というのは、誰でも一緒ですね。
実際どうするか?
返したはずのローンに関する抵当権が消えてなくて困ったら・・・
実際のところ、とりあえず、受け取ったはずの書類を探してもらいます。
どこにもない!受け取った覚えもない!って時は、金融機関にお願いしないといけないのですが、古くても、何年も前に受け取った黄ばんだものでも、何とか出来るんです。
ここで問題になるのが、
- 資格証明書の期限が・・・
- 代表者が変わっているけど・・・
- その当時の銀行とは名前がちがうけど・・・
なども問題ですが、何とかなることが多いです。最も多いパターンが2の代表者が変わっているケースですが、銀行から受け取った「解除証書」「委任状」に記載されている代表取締役が交代していても大丈夫なんです。その根拠は、
(代理権の不消滅)
不動産登記法 第17条
登記の申請をする者の委任による代理人の権限は、次に掲げる事由によっては、消滅しない。
(中略)
4.法定代理人の死亡又はその代理権の消滅若しくは変更
つまり、上の太字の部分、法定代理人(代表取締役)が変更されても、過去に発行された書類に記載されている、抵当権の抹消の委任権限は不消滅、なくなったりしないんです。
ただし、この場合には、その書類に記載された代表者が、いつから、いつまで、代表者であったかの証明が必要になります。(商業登記事項証明書で証明します。)
具体例で・・・
具体的&典型的なケースでご紹介すると、
上の宍戸理事長さんは、平成23年4月1日~平成27年3月31日まで、住宅金融支援機構の理事長を務められていたので、その間に理事長宍戸さん名で発行された、抵当権抹消登記に関する書類は、現在も使えるってことです。
ちなみに、この場合には、この写真の「履歴事項一部証明書」等での代理権の証明が必要になります。
厳密には・・・
上で説明したとおり、過去に発行された抵当権抹消登記の書類、使えるか?と言えば、使えますが・・・
よくよく考えると、この根拠法は「代理権の不消滅」。つまり、その当時に委任された代理人の権限はなくならないよって規定です。
その昔、ローン完済の際に交付された、解除証書と宛名の無い委任状に、今になって受任者(代理人)の名前を書き込むんです。それで使えるって話です。なんだか気持ち悪いですね。
ちなみに、私が司法書士になる前の日付の委任状に、代理人として「司法書士 塚本 隆之」って記載して申請したら、司法書士法違反でしょうかね(汗)