こんばんは。神戸の司法書士の塚本です。
今日のテーマは、成年後見制度、成年被後見人の居住用不動産の処分について。
こちら↓の規定についてのお話しです。
民法第859条の3
成年後見人は、成年被後見人に代わって、その居住の用に供する建物又はその敷地について、売却、賃貸、賃貸借の解除又は抵当権の設定その他これらに準ずる処分をするには、家庭裁判所の許可を得なければならない。
居住用の不動産の処分は許可が必要!
まず、ざっくりと説明すると、成年後見制度では、被後見人(以下、「ご本人」)のお住まいは、出来るだけ、現状維持。つまり、売ったりしないで、ご本人のために維持、残しておきましょうと考えます。
ご自宅は、大切な思い出が詰まった、かけがえのないものだからでしょう!
とはいえ、理想として維持しておくべきであっても、現実問題としてご本人の生活のためにお金が必要となれば、売却することも可能です。
が、居住用の不動産を売却等の処分をする際には、事前に裁判所の許可が必要になります。
裁判所は、その処分について
- 必要性があるのか?
- 価格、売却の相手方などの相当かどうか?
などを考慮の上、許可の判断を行います。
家庭裁判所の許可を得ないで売ってしまうと・・・
成年後見人が、裁判所の許可を得ないで、勝手に売却等の処分を行うと、その行為は「無効」。
結果として、買主さんや不動産業者さんなど、多くの関係者に多大な迷惑、損害が生じることになり、当然、それらの責任は、居住用不動産を勝手に処分した「成年後見人」にあります。
また、裁判所の許可を得ないで勝手に居住用の不動産の処分を行うような「成年後見人」は、後見人として失格!!不適任として「解任」される可能性もあります。
つまり、成年後見制度では、居住用の不動産の処分は慎重に行わないとダメなんです。
居住用でなければ家庭裁判所の許可は不要!
ちなみに、家庭裁判所の許可を要するのは、「居住用」不動産の処分!だけで、「居住用」でなければ、許可は必要ありません。
では、法律上、何が居住用不動産に該当するか・・・一番最初にご紹介した民法第859条3の通り、具体的には書いてません!が、実務上は、以下のように理解されています。
ご本人が生活の本拠として現に居住の用に供しており、又は将来居住の用に供する予定がある不動産。また、現に被後見人が居住しておらず、かつ、居住の用に供する具体的な予定があるわけではないが、過去において生活の本拠として居住の用に供していたことがあり、将来において生活の本拠として居住の用に供する可能性がある不動産も含まれる。
つまり、
- 現在も住んでいる!
- 過去に住んでいた!
- 将来、住む可能性がある!
そんな不動産全部が居住用!かなり広ーい範囲です。
また、居住用不動産=住む=建物だけ、と考えそうですが、その敷地、つまり、土地も居住用不動産に含まれます。
こんなケースは?
前置きが長くなりましたが、実際に私が直面したのはこんなケース。
ご本人さんは施設で生活されているのですが、施設に入所する前まではそこにお住まいであり、現在も住民票を置いておられる自宅。その敷地から、数年前に分筆した土地(空き地)の売却の事案。
まあ、普通に考えれば、1筆の空き地、更地なんだから居住用の不動産ではない。ですが、過去に住んでいた居住用不動産(の敷地の一部)ではありますので、念のために、家庭裁判所へ確認したところ、
「分筆後の土地に建物を建ててもどる可能性は全くないということでしょうか?」
と、逆に確認されました。可能性の全否定って難しいんですが、まあ、ないですよねってことで、居住用不動産には該当しない!!ことになりました。
つまり、居住用不動産であった土地を分筆しても、それだけでは居住用不動産のまま。
再び居住する可能性が無くなったその時点で居住用不動産ではなくなるってことでしょう。
居住していない土地だから居住用不動産に該当しない!!って判断は危険です。その土地の生い立ち?まできちんとした調査が必要ってことです。
つまり、成年後見制度では、不動産の処分は慎重に行わないとダメってことです。