こんばんは!神戸の司法書士の塚本です。
今日は、最近頂いた質問、「新型コロナウイルスで自粛ムードやけど、社員総会はどうしたらいいの?」ってお話しです。
感染拡大防止のため
政府からは、新型コロナウイルス感染予防・拡大防止を目的に不特定多数が集まらない措置が要請されていますが、これからの年度末、会社などは会計年度末にあたることも多く、株主総会の開催に頭を悩ませているケースもあるのではないでしょうか?
テレビ会議システムなどの設備があれば、集まる必要はそもそもありませんが、全株主が参加するってのは現実的ではありません。
家族経営の会社であれば、極端な話、株主総会は自宅リビングでも開催可能なので、新型コロナウイルスによる株主総会の開催への影響はないでしょう。
ところが今回のご相談者さんは、以前からご依頼を頂いている業界団体系の一般社団法人の事務局の方。
その一般社団法人さんには、会員として加盟される会社さんが数百社あり、3月末の決算にかかる定時社員総会の開催方法について頭を悩ませておられました。
集まらないで社員総会
一般社団法人の定時社員総会とは、株式会社における定時株主総会のような重要な会議。決算後、社員(会員)の方々が集まって、前期の決算・次期の予算の承認、役員の改選などを話し合います。
原則、集まって開催されるのです。
が、今般のこの状況により、株主総会の開催について、法務省から次のような案内がされています。
今般の新型コロナウイルス感染症に関連した、株主総会の開催について
ざっくり要約しますと、こんな状況だから、株主総会の延期はやむを得ないね! ただし、延期が長くなれば、基準日は決め直してね!ってこと。
つまり、法務省的には、株主総会は、延期してもいいよってことです。
が、一般社団法人の社員総会については、法務省からの案内はありません!(現状)
一般社団法人の社員総会も延期可能か?
法務省から案内がされているのは、現状、株主総会についてのみ。一般社団法人やその他の法人等についても、定時総会を延期していいのでしょうか?
ネット上で探してみると、他の一般社団法人さんの対応は、検討中、延期、中止などまちまち。
そこで、僭越なから、一般社団法人の社員総会の対応について、法律的に検討してみたいと思います。
法務省が延期可とした株主総会の開催時期に関する法律の仕組みは以下の通りです。
会社法 第296条
定時株主総会は、毎事業年度の終了後一定の時期に招集しなければならない。
対する、一般社団法人の法律では、
一般社団法人法 第36条
定時社員総会は、毎事業年度の終了後一定の時期に招集しなければならない。
と、ほぼ同一の規定です。
この一定の時期として、定款に定められるのは2~3カ月が一般的なのですが、その根拠は、次の法律です。
会社法 第124条
2.基準日を定める場合には、株式会社は、基準日株主が行使することができる権利(基準日から三箇月以内に行使するものに限る。)の内容を定めなければならない。
誰(どの時点の株主)を株主総会に呼ぶのかってことなのですが、こちらの規定は、一般社団法人の法律には存在しません。
そもそも、こちらの規定は「基準日を定める場合」の規定、基準日を定めない場合には適用されない規定ですので、基準日の規定がない一般社団法人においては検討不要ですね。
つまり、定時総会の開催時期に関する法律では、株主総会と社員総会に差はないので、社員総会の延期も可能でしょ!と思いきや・・・
国語の問題ですが・・
ある一般社団法人さんの定時社員総会の案内に、「定款の規定により、事業計画及び予算については、毎事業年度の開始の日の前日までに会長が作成し、理事会及び社員総会の承認を得る必要がある」ので、延期は出来ないので、規模を縮小して開催するとのこと。
ってことですが、法律上はそんな規定はなく、定款で各法人が定める事項。とはいえ一般的な定款のひな形には書かれている規定です。日本公証人連合会のひな形から引用しますと、
(事業計画及び収支予算)
第38条 当法人の事業計画及び収支予算については、毎事業年度開始日の前日までに会長が作成し、理事会の決議を経て社員総会の承認を受けなければならない。
と、このように規定されているケースが多いと思います。
が、この場合の「毎事業年度の開始の日の前日までに」は、事業計画と収支予算を「会長が作成」する部分にかかるって読むのが正解ではないでしょうか?
例年も、決算期から3カ月以内に開催される定時社員総会で承認を得ているのですからね。
つまり、定款に同様の規定があっても、定時社員総会の延期に支障はありません。
社員総会の延期もやむなし!
結論、法務省から新型コロナ対策として発表された「株主総会は延期やむなし!」は、一般社団法人にも当てはまる。
「定時社員総会も延期やむなし!」
でOKと考えます。(国語って難しいので、自社の定款をよく読んで決定して下さい!)