不動産の登記手続には、常に税金の問題がついてまわります。
登録免許税のように登記申請の際に納付が必要な税金や、不動産取得税のように、登記の数ヶ月後に納税通知書が届くような税金。「そんなはずじゃなかった」では済まされません。
ここでは、主に不動産の登記に関する税金、その他不動産に関する税金について解説します。
税金に関する相談は、税理士さんの業務範囲となりますので、登記に関連するものに限らせて頂きます。
※税金については、頻繁に改正されることがあるため、最終的な確認は税務署・県税事務所等へお願いします。
登録免許税
不動産登記を行う際に、必ず必要な税金として国に納めます。
一般的な不動産登記手続の登録免許税は以下の表のとおりです。
登記の内容 | 課税標準 | 税率 | ||
---|---|---|---|---|
所有権の保存(家を建てたとき) | 不動産の価額 | 0.4% | ||
所有権の移転 | 売買 | 建物 | 〃 | 2.0% |
土地 | 〃 | 1.5% | ||
相続 | 〃 | 0.4% | ||
贈与等 | 〃 | 2.0% | ||
抵当権の設定 | 債権額 | 0.4% | ||
氏名・住所の変更 | 不動産の個数 | 1個 1,000円 | ||
抵当権の抹消 | 〃 | 1個 1,000円 |
計算の例
- 評価額1000万円の土地と評価額500万円の建物を購入した場合
-
- 土地 1000万円×1.5%=15万円
- 建物 500万円×2.0%=10万円
あわせて25万円の登録免許税が必要になります。
※不動産価格は、売買代金ではなく、固定資産評価額を基準に計算します。
※固定資産評価額は証明書(市区町村役場で発行されます)にて確認できます。
登録免許税の軽減措置
上記の表が登録免許税計算の原則になりますが、要件を充たす場合には大幅な軽減(減税)が受けられます。
いわゆるファミリー向けの住宅に、実際に住まれる場合には、税金が優遇されるという政策です。
要件の概要は以下の表のとおりです。
住宅の床面積 | 50㎡以上 | |
---|---|---|
住宅の種類 | 新築 | 未使用のもの |
中古 | 木造 築20年以内マンション 築25年以内 | |
登記の時期 | 新築または取得後1年以内 |
登録免許税の軽減が受けられるかどうかは、床面積や築年数など登記事項証明書を確認する必要があります。
詳しくはご相談下さい。
不動産取得税
不動産を取得した場合に、課税されます。取得した際に一度だけ課税されます。
地方税で、取得後数ヶ月後に、県税事務所から納税通知書が送られてきます。
不動産取得税は、不動産の評価額の4%が原則ですが、不動産取得税にも特例措置があり、令和6年3月31日までに取得した場合には、税率が3%と軽減されています。(ちなみにこの特例措置は、毎年延長されており、常態化しています。)
さらに、登録免許税と同様に、いわゆるファミリー向けの住宅に実際に住まわれる場合には、税金が優遇される特例があります。
特例の要件については、非常に複雑ですので、ここでは割愛させて頂きます。
また、登録免許税の軽減は、売買(競落も含む)のケースに限られますが、不動産取得税の場合には、贈与や財産分与などにより取得した場合でも対象となります。
なお、相続による取得の場合には、不動産取得税は課税されません。
固定資産税・都市計画税
毎年4月頃にその年の1月1日の不動産の所有者に対して課税されます。
固定資産税は、固定資産評価額の1.4%、都市計画税は固定資産評価額の0.3%が税額として課税されるのが原則ですが、新築住宅に対する軽減や住宅用地に対する軽減など、さまざまな特例があります。
登記に関する部分としては、不動産の売買の際、代金の精算時(決済時)に1年分の税金を日割計算で精算する扱いが通例となっています。
贈与税・相続税
贈与を原因とする不動産の名義変更の際は、贈与税についてあらかじめよく検討されることをお勧めします。
贈与税の計算方法は、まず、その年の1月1日から12月31日までの1年間に贈与によりもらった財産の価額を合計し、続いて、その合計額から基礎控除額として110万円を差し引きます。その金額が基礎控除後の課税価格となり、基準になります。
次に、基礎控除後の課税価格に真ん中の欄の税率を乗じたあと、一番右の欄の控除額を差し引いて、税額を計算します。
なお、贈与税について詳しくは国税庁のホームページをご覧下さい。
基礎控除後の 課税価格 |
子・孫への贈与 | それ以外の贈与 | ||
税率 | 控除額 | 税率 | 控除額 | |
200万円以下 | 10% | ― | 10% | ― |
300万円以下 | 15% | 10万円 | 15% | 10万円 |
400万円以下 | 20% | 25万円 | ||
600万円以下 | 20% | 30万円 | 30% | 65万円 |
1000万円以下 | 30% | 90万円 | 40% | 125万円 |
1500万円以下 | 40% | 190万円 | 45% | 175万円 |
3000万円以下 | 45% | 265万円 | 50% | 250万円 |
4500万円以下 | 50% | 415万円 | 3000万円超 55% |
400万円 |
4500万円超 | 55% | 640万円 |
贈与税額は、(課税標準×税率)-控除額と計算する。仮に、相続税評価額2000万円の不動産を、第3者へ贈与した際の贈与税額は、
(( 2000万円 - 110万円 )× 50% )- 250万円 = 695万円
贈与税がいかに高額になるか、お分かり頂けたでしょうか。
また、平成27年から、子・孫等への贈与が新設され、若干優遇されています。子・孫への贈与なら同額の贈与を行っても、
(( 2000万円 - 110万円 )× 45% )- 265万円 = 585万5000円
と、若干ながら割安。
不動産の贈与の際には、事前によく検討してください。
譲渡所得税
不動産を譲渡(売却)して、所得が生じた場合に課税されます。
譲渡所得税の計算は、
算出された譲渡所得に譲渡した不動産の保有期間に応じて、短期39%または長期20%の税率で課税されます。(保有期間は5年以下は短期、5年を超える場合は長期。)
取得日から譲渡した年の1月1日までを保有期間として計算しますので注意が必要です。