先日頂いたご依頼からのご紹介。
海外在住の方が、日本に一時帰国され、その日本滞在期間中に相続手続を済ませたい!とのご要望です。
亡くなられた実父名義の不動産の名義変更手続き。法律上の相続人は、妻、子、子の3名。妻(母)名義に変更する合意も整っており、戸籍もほぼそろってます。
ここで必要になるのが、以下の3点セット
- 遺産分割協議書
- 相続人のご実印
- 相続人の印鑑証明書
今回問題になったのは、相続人さんの印鑑証明書です。
印鑑証明書にかわるもの?
日本に在住の方なら何の問題もないのですが、海外に住所を移してしまうと、日本の役所で印鑑証明書を取得することは出来ません。
そんな時に、印鑑証明書の代わりに利用されるのが、「サイン証明」と呼ばれる証明書。実印(印鑑)の代わりにサインと拇印(指印)がその人のものに間違いないって証明する書類です。発行されるのは、海外の日本公館。例えば在ロサンゼルス日本国総領事館(Consulate-General of Japan in Los Angeles)みたいなところです。
今回のお客様は、帰国前に、サイン証明書を取得し、準備頂いていたのですが、取得されていたのが分離型のサイン証明書でした。
サイン証明書には、2つの種類があって、1つは提出すべき書類に証明書が合綴されている形式(一体型)。もう一つが、今回取得されていた分離型。この人のサインと拇印はこれですよ!って書類です。
一体型であれば、一体化されたその書類に、日本の外務省の職員が、本人確認した上、その職印の目の前でサインしたことが明らかです。つまり、ちゃんとくっついていれば、問題なし。受け取る側の気が楽ですよね。
もう一方の分離型。結局、提出される書類と、サイン証明書にあるサインや拇印が一致するかどうか、受け取る側が判断しなければいけません。そもそも、印鑑証明書も同じく分離していますが、印鑑の一致、不一致の判断は出来ても、筆跡や指紋の同一性の判断なんて、できればしたくない!これが審査する側の本音です。
つまり、分離型のサイン証明書は、提出先に嫌がられるんです。
結果「一致すると判断できない」と言われてしまえば、アウト!手続が進みません!
印鑑証明書、サイン証明書にかわるもの!
だいたい、日本人が、日本で、日本の行政手続をするのに、証明書が無くて困るって、おかしいでしょ!
というわけで、印鑑証明書が無くても、サイン証明書がなくても、公証役場で本人に間違いないことを確認してもらって、その面前で、書面に署名、押印すれば、その旨証明してもらえる制度があるんです。
「私署証書の認証」と呼ばれる手続です。
今回、分離型のサイン証明書でゴリ押しする方法で万が一があると、日程的に間に合わないリスクがあったので、この制度を使って、申請することになりました。
そもそも、印鑑証明書やサイン証明書を添付する理由って、一緒に提出する書類が、本人の意思に基づいて作成されたかどうかを確認するためです。
公証人が確認してるんだから、OKに決まってます。
といいながら、依頼人さんに迷惑をかける訳には行かないので、20000%の自信がない事案については事前に法務局へ確認はするんです。
そんな仕事です。司法書士って。