相続手続

僕の相続分を全部子供へ・・・【利益相反】

こんばんわ。神戸の司法書士の塚本です。最近のご相談事例からのご紹介。

奥様を亡くされた夫からのご相談

亡き奥様名義の不動産を、未成年の娘様(1人)へ相続させたい!とのご要望です。

利益が相反するかどうかは、内容ではなく形式での判断なんです。

ご相談者
僕はまったくいらないので、娘名義に変更してください
司法書士 塚本
実は娘様だけの名義に変更するには、相続登記の他に必要な手続があるんです。
ご相談者
僕は一切もらわないんですよ!娘が損することないじゃないですか!

おっしゃられることは重々理解できます。私も不要な手続を押し売りするつもりはないんですが、今回のケースのように、

未成年の子供とその親が、遺産分割協議をすること

は、そのこと自体が利益相反行為として禁止されています。

遺産分割協議とは、遺産の分け方の話し合い。かんたんに言うと、ケーキをどうやって切るか?ってイメージです。どちらかが大きくなれば、もう一方は小さくなる。こんな関係を「利益相反」といいます。

ご相談者様のように、いっさいがっさい、全部を、お子様へ譲りたいとの意思があったとしも、内容うんぬんではなく形式として「ダメ」とされるのが法律実務。

つまり、親とその未成年のお子様との間で行われた遺産分割協議書を添付して相続登記を申請しても、却下されてしまいます。

ではこのケースではどのような方法が考えられるのかというと、

未成年のお子様の利益を守るため

方法はこちらの4つが考えられます。

  1. 特別代理人を選任し、遺産分割協議の上で、娘様名義へ相続登記
  2. 父が相続放棄を申し立てて、娘様名義へ相続登記
  3. 娘様が成人するまで待つ
  4. 法定相続登記後に贈与等で父持分を娘様名義へ変更

1.特別代理人を選任し、遺産分割協議

今回のケースのように、親権者とその子との利益が相反する場合、家庭裁判所へその子のための特別代理人を選任してもらった上で、特別代理人との間で遺産分割協議を行い、相続登記を進めることが出来ます。

なお、今回のケースは、未成年のお子様が1人ですので、特別代理人も1人ですが、未成年のお子様が複数いる場合には、その子ごとに特別代理人を選任する必要があります。

また、今回のケースでは、親権者(父)が「全部娘にあげたい」との意向です。特別代理人としても、その子の利益になると判断するでしょうから反対することはないでしょう。

逆に「親が全部もらいたい」などの思惑があれば、特別代理人としては反対すべき事案です。特別代理人は「子のために選任される」のであって、親の手続のために選任されるわけではありません。

特別代理人の候補者なども問題もありますが、今回のケースでは、有力な選択肢です。

2.父が相続放棄を申し立て

ご相談者である父が奥さんの相続に関して相続放棄を申し立て、それが認められると、相続人は未成年のお子様だけになります。

したがって、単独(おひとり)で相続したことになり、娘様名義へ相続登記することが可能です。

なお、この相続の登記手続は、娘様の親権者であるお父様が娘様を代理して行います。(相続放棄をしていても、父が子の親権者であることは変わりません。登記手続を代理することは可能です。)

この相続放棄の方法も有力な選択肢です。ただし、相続放棄には期限があるのでその点だけは注意が必要です。

3.娘様が成人するまで待つ

未成年者はきちんとした法的な判断ができないから保護しようとするのが、利益相反・特別代理人の制度。

したがって、未成年のお子様が成年になるまで待てば、親子で遺産分割協議を行うことが可能。特別代理人の選任や相続放棄などの余分な手続が不要でコスパ的には最善との考えもあります。

ただし、今回のケースでは、お子様がまだまだ幼少で、成人まで10数年を要すること、その他の諸事情(父に前妻との子がいる)を勘案し、選択肢から外れました。(待っている間に父に相続が起これば「争続」に発展しかねませんので)

4.法定相続登記後に贈与

相続手続を速やかに行うためには、1の特別代理人選任、もしくは2の相続放棄の方法が有力な選択肢です。時間的猶予などの諸事情が許せば3も有力な選択肢です。

ただ、相続放棄の期限を超えてしまった場合や、お子様が複数名いる場合など、それらの方法を選択できない場合には、一旦、法律の定めにしたがった割合で相続登記を行い、父が相続した持分をお子様へ贈与するなどの方法も考えられます。

不動産の価格によっては、多額の贈与税の負担が発生する等、おススメは出来ませんが、ご要望を実現するための方法としてはあり得ます。

まとめ

親権者と未成年のお子様とが共同相続人になった事案は利益相反にご注意を!

解決方法をいくつか紹介させて頂きました。事案によっては別の方法が最善かも知れません。

お困りの際にはお気軽に専門家へお問い合わせください。

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