こんばんは。神戸の司法書士の塚本です。

以前に書いた「中国籍の方の相続登記」という記事をご覧頂いた方からご依頼頂きました。

ハイ、もちろん、中国籍の方の相続登記です。

相続人の確定作業

外国籍の方の相続手続、日本国籍の方と何が違うかというと、誰が相続人になるのか?を日本の役場で発行される戸籍謄本などで証明できないこと。基本的に、外国には戸籍制度はありません。

そして、外国の役所で発行される証明文書(もちろん外国語です)を日本の役所で使用するには、翻訳文が必要になるところ、私は外国語が堪能ではありません!すいません。

したがって、各国の相続制度による相続人の確定作業を行い、その翻訳文を作成してもらう必要があるので、日本国籍の方と比べ、手間暇がかかってしまいます。

日本生まれの中国籍の方

とはいえ、実際のところ、うちの事務所は中華街もある神戸なので、ご依頼を頂くのは、神戸に多い日本生まれの中国籍の方のケース。

このケースは、外国人登録原票で、ある程度の身分事項が記録されていますし、日本の華僑総会というところへ相続公証書なる書類の発行を依頼することができ、さらに翻訳文まで作成してもらえるので、割合スムーズに進めることが出来ます。

ただし、やはり、日本国籍の方の日本の役所での手続はないので、「司法書士」の職務上だからっていう特権が使えません!ので、日本国籍の方と比べ、ご依頼人さんのご協力が必要になります。

中国生まれの中国籍の方

ところが今回のご依頼は、被相続人が、中国で生まれ、日本に来日、居住、生活し、日本国籍の方と婚姻され、お子さん(日本国籍)がおられる方の相続。

このケースでは、年齢などの条件にもよりますが、日本の華僑総会を通じての「相続公証書」の発行が出来ません。

したがって、原則として中国国内での公証処で、相続関係を公証してもらう必要があります。

中国籍の方との国際結婚

ところで、日本籍の方と中国籍の方が日本の役所で婚姻の届出をする場合には、中国籍の方が重婚でないことを証明するため中国の役場で取得する「婚姻要件具備証明書」を添付します。

中国の公的な文書を添付して、日本の役場に婚姻届を提出するのですが、日本での婚姻の効果が、自動的に中国の記録に反映されるわけではありません

中国籍の方の相続登記 PART2


「居民戸口簿」という中国の戸籍のようなものの記載内容の変更を、自ら「申請」しなければいけません。その申請をしない限り、中国の記録上は、「未婚」のままなんです。

無いものは無いんです!

つまり、日本の記録上は、日本人配偶者と婚姻し、その間に子供が存在するはずの方の、中国での記録は「未婚」。

つじつまが合わないこんな状況で、中国の公証処で「被相続人には日本人の夫と子がいる」なんて証明書を出してもらえるはずもなく。

大体、日本人の夫も、中国の公証処において、「夫だったんです!」との証明すら出来ません!
当然、私が中国に行っても「WHO ARE YOU?」な訳で、何も出来ません!

ということで、中国にお住まいの被相続人のご両親にご協力を仰いだ訳ですが、「被相続人の相続人は、父と母です。」とか「被相続人には子供がいない」とか、日本の役場で役立ちそうな「公証書」の発行は出来ないって結論に。

はい!無いものは無いんです。日本人じゃないんですからね!

でも、外国人でも日本の不動産を買えるんですから、どうにかしてもらわないと困るんです!

仕方なく、来日された日以降は、外国人登録原票や日本国籍の配偶者の戸籍などで、相続関係を証明(疎明)し、婚姻前の期間については、「居民戸口簿」のコピーを添付し、さらに他に相続人はいないことの上申書(印鑑証明書付)を添付、つまり、入手可能な身分関係の記載のある資料を全部まとめて登記申請したところ、

登記官から、「もう少し頑張って!」との連絡が・・・

最終的な解決方法は?

代替案1は、「居民戸口簿」の原本の提出(提示)。そして

代替案2が、公証役場で「他に相続人がいない旨」の宣誓供述書を作って添付する方法。

今回は、ご依頼人さんに協力頂き代替案1の方法にて、登記完了となりました。

つまり、中国籍の方の場合の相続人を確定する資料としては、

中国の公証処で発行される「相続公証書」

が、発行されない、入手できない場合には、

「居民戸口簿」+「外国人登録原票」+「戸籍?」+「上申書」

も、不可の場合は、

「外国人登録原票」+「戸籍?」+「宣誓供述書」

これで、一応は受け付けてもらえるはず。あと足りない部分は、ケースバイケース。登記官と相談するよりないようです。

まあ、とにかく、ミッションクリア(登記完了)。ご依頼ありがとうございました!