相続にあたって、プラスの財産については、遺産分割協議によって、共同相続人の間で自由に分けることが出来ます。では、借金・負債についても同じように分けることができるでしょうか?
分けることは自由ですが、債権者には主張できません!
借金の遺産分割の効果
「遺産分割協議によって、財産や借金を相続人の1人にまとめたから大丈夫!」
このようにお考えの方が多いようです。
しかし、そのような遺産分割協議には落とし穴があります。
たとえば、兄と弟2人の遺産分割協議で、「兄が全部責任を負う・弟は借金を負わない」と合意すれば、兄弟の間での約束としては有効です。
しかし、借金・負債の相続に関しては、相続開始時に兄弟それぞれが法定相続分に従って相続したものとみなされるため、銀行など債権者には支払いを拒むことができません。債権者は弟に対しても父親の残した借金を(相続割合にしたがって)請求できるのです。
その請求に対して、「俺は関係ない!兄に請求してくれ!ここに遺産分割協議書がある!」といっても、その主張は、残念ながら認められません。
相続人の間の約束としては有効
債権者などの第三者との関係では無意味
相続人の間の約束として有効というのは、債権者からの請求を受けた弟が、兄に代わって返済すれば、弟は兄に対して返済した金額の請求ができる権利(求償権)が認められるという意味です。
また、遺産分割協議への参加は単純承認にあたる可能性大きいので、相続放棄を行う権利を失ってしまいます。
絶対に負債・借金を相続したくない場合には、相続放棄が必要です。
免責的債務引受契約
相続放棄が有効であることがわかっていても、出来ないケースもあります。
そのようなケースで、借金を相続人の中の一部の人にまとめる場合には、銀行等の債権者の承諾が必要です。
- 借金をまぬがれる相続人
- その借金を背負う相続人
- それを承諾する債権者
これら当事者の契約が成立して初めて、【借金をまとめる】ことが有効になるのです。
なお、このような契約を、免責的債務引受契約といいます。
相続放棄と遺産の放棄のまとめ
借金の遺産分割協議には要注意
「借金も全部背負うから、財産も全部いただく」このような約束では、借金からまぬがれることができません!
遺産分割協議への参加は単純承認にあたる可能性大
遺産分割協議は、「相続財産をどうするか」を決めるための話し合い。
つまり、「相続財産を処分した」として、相続放棄ができなくなってしまいます。
確実に借金からまぬがれるには相続放棄が必要です!